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「さてと、お楽しみはこれからよ」
吸血鬼がぱちん、と指を鳴らすと、ガレキの下からぞろぞろと、若い男たちが現れた。10数人だろうか。
「まさ、か…」
「あなたたち。痛い思いをさせられたのは分かるけど、優しくしてあげなさいね」
吸血鬼と男たちはケイを取り囲むと、服を脱ぎはじめた。
「やめてくれ…っ」
言葉とは裏腹に、抱かれたてのケイの身体はさらなる快感を求めて、震えていた。
「そんなこと言わずに、一緒に楽しみましょうよ」
吸血鬼も裸になり、汗とホコリにまみれたケイにぴたりと寄り添う。
「さあ、いらっしゃい?」
待っていたとばかりに、男たちが2人の美女に群がる。
「うわぁああっ…むぐ、ぷはっ」
ケイの口に、女性器に、肉棒があてがわれた。
「あ、や、ゆっくり…ああんっ、んっ」
「ああんっ、こっちにも…んっ、んっ」
吸血鬼も太い男性器をくわえこみ、愉悦の表情を浮かべている。
それだけでは足りないとばかり、ケイの肛門にも亀頭が押しあてられる。
「そ、そこは…ああああああっ!?」
一気にアナルを貫かれるが、痛みはなかった。重く、深い快感がケイの意識を苛む。
「んくっ、ぷは…はっ」
(イヤ、イヤなはずなのに…美味しい…)
ケイの大きな胸にペニスが埋められ、口先に向かってピストン運動を行っている。
愛液や精液、母乳にまみれてドロドロになったケイの表情は、とろけきっていた。
いつしか肉棒を弄び、舌を絡めるように愛撫しているケイ。
術のせいか、肉体のせいか、男性器に対する抵抗はなく、積極的にくわえこむようになっていた。
「んっ、んんっ…気持ち、いいっっ…あはっ、あんっ…」
びゅく、びゅく、と顔面に発射された精液を、愛おしそうになめとる。
「あらあ、すごいわね…んはっ、あぁああっ…」
「あぁっ、もっと…やぁ、はんっ…」
女吸血鬼が楽しそうに快感を求めるのを横目に、二本刺しにされたケイもまた、男の身体の間で喘いでいる。
前と後ろ、口を同時に犯され、官能に苛まれて顔をしかめる。
「もう、もうだめ、がまんできない…あ、あぁああああっ!?」
絶頂を迎えて、ケイの身体がびくん、と震える。豊満な尻がぷるぷると震え、アナルとヴァギナが同時に締め付けられると、中に入っていた男性もまた射精した。
熱い奔流が、3つの穴からケイに流れ込む。
どぴゅ、びゅ、ぴゅっ…
「ん、んんんっ!?や、こんなの…きもちぃ…あぁぁん…!!!」
快感が精液に乗って、ケイの頭の中で白い渦をまく。
意識が飛びそうになるのをこらえながら、ケイはひときわ大きな嬌声をあげた。
「ケイさん…」
「や、ばか、やめろ…」
サトシが触れたところから、えもいわれぬ快感が走る。豊満な肉体が、びくん、びくん、と震える。なすがままに、装備が外されていく。
ぱちん、ふるん。
胸当てが外され、ついにケイも見たことがなかった大きな乳があらわになった。ケイの興奮に呼応するように、ぱんぱんに張りつめて、乳首がピン、と勃起している。
「やめ…あ、はっ…ぅん」
サトシは胸にキスをしながら、さらに下の方をまさぐっていく。
ぱかん、と音を立てて、下半身のプロテクタが外れる。
下半身もあらわにされると、みなぎったものがケイの大事な部分に押し当てられた。
ケイのそこは、すでにドロドロに溶けて、熱を帯びて待ち受けている。
にやにや笑いながら見ている吸血鬼を尻目に、なんとかサトシから逃げようとするが、くねくねと身をくねらすばかりで、むしろサトシを迎え入れるような結果になった。
ずぷ…っ
「はぁ…んっ」
たっぷりの愛液をたたえたケイが、サトシのそれをやすやすと受け入れる。
これまで身体を交えた狼男や牛男と違い、サトシは普通の人間で、男のケイゴの親友でもある。倒錯した感情が、ケイの興奮を高めていた。
挿入されただけで、達してしまう。快感の波に流されながら、ケイもまた腰を振っていた。
ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅぷ。
「やっ、あぁん、あん…」
肉棒がケイの中に繰り返し押しこまれ、水音とケイの嬌声が夜の森にひびく。
ずっ、ちゅ、ずっ、ちゅ
「ああっ、あん、気持ちいい…っ」
ピストン運動が激しくなり、否応なしにケイもまた、高みに昇りつめていく。
つぷっ、つぷっ、ぷちゅ、ずちゅ
ケイは動きに合わせて腰をくねらせて、必死に快感をしぼり取ろうとしてしている。ケイの秘所がきゅうきゅうとサトシを締め付け、ついに頂点に達した。
どく、どくっ…
「あ、サトシのが、中で…熱い…あぁぁぁ…」
膣の奥で精液を浴びて、ケイも一気に高まった、その時。
ぷしゅうっ
ケイの双乳から、勢いよく白い液体が噴出した。
「え、おっぱい出てる…や、あぁぁん!!」
とろりとした母乳が、サトシの顔面を濡らす。ぽた、ぽた、と下になっているケイに落ちてくる。
「あらあら…サトシ君、せっかくのおっぱい、吸ってあげなさい」
母乳を浴びたサトシが、乳首に吸い付き、もう片方の乳をしぼる。
自分の身体から、あたたかい液体が流出していく感覚。
「し、しぼったら、だめ…あぁ、もぅ、もぅ…っ!あはぁぁぁん!!」
両胸から、股間から、痺れが走る。
男には味わえるはずもない快感に、ケイは身体をのけぞらせ、果てた。
ピシッ、パキッ
ゴ、ゴ、ゴ
塔が大きく揺れだしたのを確認して、ケイは給水塔から外に出た。
「おーおー」
ゆっくりと傾いていき、地震のような地響きと共に、崩れ落ちていく塔。それを自分がこの手でやった、という事実に、今は爆弾のような乳房がついているケイの胸の奥にある、男性的な心が刺激される。
「ちょっと、待て、お前ー!」
ガラッ、と塔の残骸が動き、その下から先ほどの女性が飛び出してきた。
すっかりすすけてしまってはいるが、それだけではない。ぴったりと身体のラインに沿ったダークスーツに、黒マント。マントの裏地と、ベストは燃えるような赤。
「ちょっとあんた!何を無茶してんのよ!」
人を小馬鹿にする余裕もなくなったようで、髪を振り乱して怒鳴っている。
それはそうだ。自分の寝蔵が突然取り壊されたら、誰だってパニックになるだろう。
吸血鬼といえど、例外ではなかったようだが、こと現在においては、あまり良いことではなかったようだ。
「ちゃんと聞いてんの!?この牛おん…なっ!?」
ケイがひとかかえほどもあるガレキを、次々に投げつける。
ふいの攻撃にもなんとか対応しようとした吸血鬼だが、避けきれずに態勢を崩したところを狙われ、再びガレキの下敷きになった。
「弱い」
『君が強すぎるんだ』
ガラッ
どうやって移動したのだろうか、ケイの背後のガレキから、吸血鬼が襲いかかろうと
ガシャン!
…したところに、ケイが壁を投げつけた。2m四方もある厚いコンクリートの塊が、吸血鬼の細い身体を直撃する。
「かはっ…あいたたた…」
吸血鬼の端正な顔が苦痛にゆがむ。
「せいっ!」
ドカッ!
その隙を逃さず、ケイはさらに全身を使った蹴りで追い打ちをかけるが、これは避けられる。先ほど投げたコンクリート壁に突き刺さり、まるで豆腐か何かのように粉みじんになる。
「こ…」
「こんなん無理!やってられないわー!!」
コンクリートに自分の姿を重ねたのか、吸血鬼が顔を青くして、へたりこんだ。
戦意なしとみたが、警戒は解くことなく、ケイが女に近寄る。
「眷属の皆を解放すれば、許してやる」
「分かった…分かったわよ、ケイゴ君」
『!?』「俺のことを!」
「ええ、知ってるわよ…洞窟に住んでたスライムと融合して、大層活躍してるじゃない」
「貴様…っ」
「それで、解放する、ってのは、後ろのサトシ君で良かったのかしら?」
「さ…サトシ…っ!?」
「ケイさん…いや、ケイゴ、なのか…?」
振り返ると、車にいたはずのサトシが目を丸くしてこちらを見ている。意識を取り戻して、給水塔の様子を見に来たのだろうか。それとも、操られるままにここへ来たのだろうか。
「うそだろ…ケイさんが、そんな」
「すまん、サトシ…言い出せなくて」
「ところでサトシ君」
「?あんたは…どこかで…」
女吸血鬼がサトシに話しかける。優位と見たか、その表情は明るい。
「まぁそれはいいじゃないの。それより、騙してたお詫びに、ケイゴ君が抱かせてくれるそうよ」
「う…あ…?」
吸血鬼の言葉に、サトシの様子がおかしくなり、慌ててケイが駆け寄る。
「サトシ!?お前、サトシに何を!」
「かかったわね!!」
刹那、女吸血鬼の目が妖しく光り、呼応するようにサトシの目がギラリ、と輝く。
「くっ…」
『しまった、邪眼だ!』
どくん
熱い液体を飲んだように、ケイは胸の奥に衝撃を感じた。臨戦態勢をとっていた身体からは力が抜け、誰かにしなだれかかりたくなる。
「あらあ、やっぱり効き目は弱いか」
「く…っ。て、めえっ…」
睨みつけようとするが、気が散ってうまくいかない。そうする間に、サトシがゆっくりと歩み寄り、ケイの肩を抱いた。
「そうそう、サトシ君。そのままいただいちゃいなさい」
「ひ…卑怯だぞ…や、やめろサトシっ」
抵抗しようとするが、欲望に支配された肉体が、言うことを聞かない。
ぱたっ…サトシのなすがまま、コンクリートの上に押し倒された。
「やめた」
勢いこんで階段を登りかけたケイだったが、
『え…』
「相手は、いきなり化けて人を騙そうって女だぞ。真正面から行ってどうするんだ」
『それは、そうだが…』
急に立ち止まると階段を降りた。壁をこん、こん、と叩きながら続ける。
「壊せるのは、ドアだけじゃないよな?」
ケイの言葉と同時に、触っていた壁が、スポンジケーキか何かのように崩れて消えた。
『まさか…』
「ああ。この建物、ぺしゃんこにしようぜ?」
この力の本来の持ち主は、商店街をひとつ壊滅させていた。特殊な建造物とはいえ、確かに壊すことは可能だろう。
ケイは手始めに、壁から覗いた鉄筋を力任せに引き抜いた。金属が、まるでゴムでできているかのように、伸び、ねじれ、音を立ててちぎれる。
五、六カ所の鉄筋を引っこ抜いたところで、限界が来たのだろう、小さな揺れが建物のあらゆるところでギシギシと、亀裂の入る音がする。
ケイはこの給水塔に、止めを刺すことにした。生き埋めになったところで、この怪力だ。なんとか助かるだろう。
「たあっ!」
できるだけ大きく揺れるよう、基礎部分を狙ってゆっくりと、しかし渾身の平手を放つ。
変身を終えたケイの頭部には、前回とは異なる、硬質の角。そして全身は白黒のツートンカラーを基調とした、硬いパーツで覆われている。そして、
「これはないな…」
もともと大きなケイの乳房は、さらに大きく膨らんでいた。胸当てにきつめに詰め込まれてなお、子供の頭ほどもある。大きな大きな乳房が邪魔をして、ケイからは自分の下半身が見えない。
「…これが、牛男の?」
『そうだ。彼が譲ってくれた遺伝子の力が、どんなものかと思ったが…予想以上だな』
彼は茶色い体色だったが、ケイの今の姿はどこからどうみても、乳牛であった。それについては考えないことにする。
「そうなのか?むしろ動き辛いけどな。なんか硬いのもたくさん付いてるし」
『ああ、スピードはそこそこだろうな。だが…ケイ、ちょっとそのドアを開けてみてくれ』
「ええ?だって鍵が…」
『いいからいいから』
いぶかしみながらも、ケイはドアノブを回して、引っ張る。
ぷち。
ドアノブが取れた。
がしゃん。
ドアが蝶番ごと外れた。
「え、ええっ!?」
『やはり、すごい力だな』『この力があれば、敵はいないだろう』
壊れたドアの向こう側に、給水塔のラセン階段が見える。
建物の中には月明かりも届かず、先の見えない暗闇が、ケイを誘っていた。
(待ってろ…サトシ)
ケイは、車に置いてきた親友を思い、勇気を奮い起こすと、暗闇の中へ突っ込んでいった。
「ちょっと待て」
すぱん、ばたん。
ケイの触手が目にも止まらぬ早さで女性の足を払う。
「な、何を…」
尻餅をついた女性の後頭部に紅い触手を打ちつけ、気絶させる。
『ケイ、一体何を…』
「なあ、こいつさ」
『…?』
「どうして俺に助けをもとめたんだ?」
「俺は、いわゆるスーパーヒーローだが」
「初めてこれを見て信じる人はまず、いないだろ」
「いいとこ、夜中にこっそりコスプレしてる危ない姉ちゃんだ」
「それなのにこいつ、俺に会うなり『助けて!』だ」
「もし本当なら悪いことするが、とりあえず気を失っててもら…っ!?」
一陣の風が吹いた。瞬きするようなその一瞬、風が運んだとでも言うように、女性の姿はかき消えた。
「あ、あいつ…っ!?」
『…眷属にできることじゃない。おそらく、あれが本体だ』
「あれが、吸血鬼!?」
『それに、眷属は男ばかりだっただろう?』
ばたん
給水塔の方角から、重い扉の閉まる音。
『逃げたな』
「くそ…っ」
すぐに追いかけ走るが、ドアには鍵がかかっているらしく、開く気配がない。
「おい、なんとかならないのか!?」
『なる』
「そんな……え、なるのか!?」
『どうしたんだ』
「いや、…えーと、なんとかしてくれ」
『分かった』
ど
く
ん
「ん…ぐっ…」
重く、硬い塊のようなものが体の中を這う感触。
それが動き回るたび、全身がみし、みし、と音をたてている気がする。
同時にケイの身体を包んでいた、紅色のスーツが溶け、スライムが表面を這いまわる。
「はぁっ…く、あ、あ」
突然のことに思わず地面に膝をつく。体内の重い感覚と、スライムの柔らかい感触のギャップに身悶えするケイ。
「あぁっ!…っは、は…」
『終わったぞ』
「…お前な!変身するならそう言えよ…って、なんだこりゃあ」
深夜の街を、一台の軽自動車がうなりを上げて駆け抜ける。
「次はどっちだ!」
『左。給水塔だ』
結局、元に戻す方法は、根を断つ、すなわち吸血鬼本体を叩くことだった。
そこでケイは、敵を吸血鬼だと仮定して、住みつきそうな場所をいくつかピックアップし、端から回っている。
いわく、月がよく見える場所が必要なこと。高いところが好きで、尖塔に好んで住むこと。森があればなお良い。
次の給水塔が、このあたりで一番住んでいる可能性が高い。それというのも…
「うう…」
(サトシ…)
吸血鬼の餌食になった友人、サトシの家もまた、給水塔のそばにあるからだ。
ちなみにサトシは、ケイとデートしたあとに凶暴化して返り討ち、後頭部をきつくやられて気絶している。
命に別状はなさそうだが、放っておくわけにも行かないので、助手席に乗せている。
「ついた…けど」
『気配はないな。とりあえず行ってみるか』
「ああ。サトシ、ちょっと待ってろよ」
車を止め、給水塔を目指して森に入っていく。暗い木々の間をかきわけかきわけ、給水塔のほど近くまで来た時だった。
「キャアアアアア!」
『!?』
「この先だ!」
甲高い悲鳴を聞くやいなや、それに向かって走りだすケイ。
すぐに、給水塔から駆けてくる女性に出会った。
「はっ、はっ…よ、良かった…助けて」
「大丈夫か!?」
「か、怪物があの中に…みんな襲われて…!」
と、息も絶え絶えに給水塔の方を指差す。
「…」
『行こう、ケイ!』
「だからね、ケイさん、俺はケイさんがホントにすごいと思うんだよ」
「あ、ありがとう…」
サトシに目をキラキラ輝かせながら言われ、ケイはまた赤面した。酒の勢いもあるのか、恥ずかしいことをどんどん言ってくるので、ケイはずっとこんな調子だ。
「あ、もうこんな時間だね。そろそろ出ようか」
「え、ああ」
ケイは断ったのだが、当然の様におごられてしまった。少し罪悪感を感じる。
「ごちそうさま、サトシ君」
「いえい…え」
店の外に出て、礼を言おうとした途端、サトシの様子がおかしくなった。目を見開いたまま、月を見つめている。
「だ、大丈夫、サトシ君」
『危ない、下がれ!』
ブン、とサトシが腕を振る。致命傷にこそならないものの、十分な威力を持った打撃が空を切る。
「ど、どうしたんだ、サトシ!」
「…」
つい先ほどまでの饒舌さとはうっとかわって、サトシは無言で、こちらに鋭い視線を向けている。
『これは…やられているな』
「昨日の奴らと同じってことか?」
『おそらく』
ガッ!振り降ろしてくる両手を、身軽にかわす。昨日の具合では、またいつ増援がくるか分からない。ここは早く離れないと…
サトシが、矢次ばやに攻撃を繰り返すのを、ケイは見事にかわしていく。少ないが、いままでの戦闘経験が、ケイを成長させていた。
しかしサトシは攻撃の手を休めない。ケイは、親友に攻撃されている動揺から、余計に体力を消費している。変身前の身体は、体力的には普通の女性と全く変わらない。このままでは…
「許せ、サトシ!」
サトシの後頭部を、思いきり殴りつける。武道の達人のように、傷つけずに済まないのが辛いところだが、ともかく、降ってわいた危機はなんとか脱した。
「…はぁ、はぁ」
肩で息をして、倒れたサトシを見つめる。
『早く逃げないと、追っ手がやってくる』
「なぁ。こいつ、これからどうなるんだ?」
『…言いにくい話だが』
『昨日、そして今。彼らが何をされたのか、調べてみた』
『彼らは吸血鬼の「眷属」にされている』
『血を吸われ、操られている状態だ。普段はなんともないが、君を見ると襲ってくるだろう』
『そして、彼らが自然に治癒することは、ない』
「…!じ、じゃあ」
『吸血鬼を倒せたなら、治すことはできるだろうが…全く姿を見せていない今、』
『彼にできることは、ない』
「そんな!なんとかならないのかよ!」
ケイは激しく食ってかかる。
「サトシはいいやつだ!長いこと付き合ってきたが、気のいい、お人好しだ!それに、今日だって…ヒーローに憧れてる、って、すげえ良い顔で…」
息が切れ、大きく息継ぎをする。
「このままじゃ、サトシがかわいそうだ!何か、できることはないのか!」
『…ない、ことはない。ただ、問題が…』
「何の問題だろうか、構うもんか!今は、こいつを助けてやるのが先だ!」
『そうか、そこまで言うなら…まず、場所を変えようか。サトシ君を運ぶ。変身するぞ』
「お、おう!」
変身…とはいえ、すでに女性の身体なので、服が変わるだけだ。ブラウスが、ジーンズがどろり、と溶けたかと思うと変色し、赤いスライムとなっていく。
「く、ん…っ」
冷たいスライムが肉体にまとわりつく、不気味な感触に小さく声を上げるが、今はかまっていられない。そうしている間にスライムは全身をぴっちりと包む薄いスーツとなる。どこからかゴーグルを取り出し装着すると、ホルモンガールへの変身が完了した。
ケイは背中から触手を伸ばして倒れたサトシを絡めとり、持ち上げて、そのまま自分の背中にくくりつける。
しっかり固定されているのを確認すると、ケイは顔を上げた。
「…よし!行こう!」
『まずはあっちだ。詳しい方法は、移動しながら説明する』
「わかった!」
言うが早いか、人一人担いでいるとは思えない速度で、軽やかに走り去った。
深夜。復興の進む街に、誰かが争うような物音がひびく。
「くらえっ!」
シュッ
ホルモンガールの腕から真っ赤な触手が伸び、目にも止まらぬ速さで敵の後頭部を打つ。カクン、と膝が折れ、その場に崩れ落ちる敵。
「いたぞ、こっちだ!」
「くっ…」
次々に触手を伸ばし、続いて現れた追っ手を器用に気絶させていく。
次の敵が現れないことを確認し、ホルモンガール…ケイは緊張を解いた。
「一体どうなってんだ!なんで俺が狙われてんだ!」
『ああ。普通の人々に襲われる理由は全くないな。』
ケイの周りに倒れている敵の服装は、てんで統一間がなかったが、みなリラックスできる格好だった。ジャージにパジャマ、パンツ一丁のものすらいる。しかし特別なところは何もない、どうみても普通の青年たちだ。
「これが皆普通の人だってか!?」
『そうだ。だが気になることはある』
「?」
『首筋を見てみろ』
倒れている男達の首筋には一様に、小さな傷が二つあった。まるで…
「…吸血鬼でも出たってのかよ?」
『いままで、狼男や牛男を見てきただろう。今さら不思議ではない』
「まぁ確かに、それを言いだすとお前が一番不思議だもんな」
『君もな』
「俺は普通だ!」
次の日。
ケイは道端で立ち止まり、大きくため息をついた。
襲われたあたりに、何か手がかりがないかと探しに来たのだが、見事に空回り。意識を取り戻してどこかへ消えたのだろう、昨日の男達の姿もなかった。
「なぁ、男に戻してくれよ」
『だめだ、昨晩みたいに、突然襲われたらどうする?』
吸血鬼ならば昼間は活動できないとは思うものの、それでもなんだか不安だ、というスーツの意見に従い、まだ女の姿のままでいる。
昨晩。ケイは夜中にコンビニに行こうとする途中、数人の暴漢に襲われた。
運よく隙をついてホルモンガールに変身し、撃退することができた。
「だって、この格好…」
『宿主の命を守るのは、当たり前のことだ』
ケイは今、ジーンズに白いブラウス、スニーカーと言ういでたち。もちろん、ケイは女ものの服を持っていない。はちきれそうに熟れた女体を包んでいるのは本物ではなく、ケイの身体に同居するスライムが、記憶を頼りに作ったまがいものだ。いまケイの身体を女に変えているのも彼の力で、それ以外にも、彼は色々と特殊な能力を持っている。
「ケイさん!!」
街角でふくれて立っていると、声をかけられた。この姿で名を名乗ったのは、ただ一人。ぱたぱたぱた、とこちらに駆けてくるのは、やはり親友の…。
「ふぅ、ふぅ…お久しぶりです、ケイさん!俺は、サトシって言います!」
「あ、あぁ…久しぶり。サトシ君。あれから元気?」名前を名乗られても、昨日も一緒に大学にいたのだから、知ってるよ、というものだ。
「はい、元気っす!そういえば、あのあと、牛男を退治してくれたの、ケイさんですよね!?」
「あ、あぁ…まあね」
先日、街に牛男が現れ、大暴れする事件があった。その途中でサトシを助け、その後も色々あったが、とにかく撃退することには成功した。
本当は優しかった牛男との色々、を思い出してしまい、ケイは赤面する。
「…?どうかされましたか?」
「いや、なんでもないよ。大丈夫」
「そうですか…そうだケイさん、この後お時間ありますか?良かったら、どこかでお食事でも」
「えっ!?」
意外な誘いに驚いて、サトシの顔をまじまじと見るケイ。ケイゴとして、男同士で飲むことは何度もあったが…。
「ね、いきましょうよ」
何も言わずじっと顔を見つめるケイを脈ありと見たのか脈なしと見たのか、サトシはさらに畳みかけてくる。
普段とは違う親友の様子を見てやるのも、きっと面白いだろう…
「ああ。良いよ」
「やったあ!良い店知ってるんですよ!行きましょう!行きましょう!」
無邪気に喜ぶサトシを見つめていると、ケイまで嬉しくなる。
二人は、夕暮れの街を歩いていった。
「はぁ…はぁ…ふぅ…」
(あぁ、気持ちいい…)
長く続く快感の余韻に、つい口を緩めて笑顔になるケイ。
ぷち。
くいっ、とケイの、腰から下を申し訳程度に覆うパンツが引っ張られたかと思うと、上と同じく、簡単に千切られた。ぴら…とめくられ、グレーの隠毛があらわになる。パンツの裏地から、白く濃い愛液が糸を引く。絶頂を迎えて、受け入れる準備は整っているようだ。
牛男の股間も準備ができているようだ。通常の倍はあろうかという、まさに野生的なモノが、天にそびえたっている。
「ちょ、待って、待って…無理、無理…」
(だめだ、気持ちよくて、身体が…)
慌てて牛男を止めようとするが、イッたばかりで、まだ上手く動けない。魅惑的に腰をくねらせ、牛男を余計に刺激するだけになってしまった。
牛男は構わず、ケイの両足をくいっ、と開いた。くぱ…っ、と大隠唇が開き、放たれた濃い女の匂いが、牛男ばかりか、ケイの鼻にまで届く。
(うわ…俺のあそこ、えろい匂い…!)
牛男は、ケイの足の間に身体を入れると、自身の肉棒を愛液でどろどろに溶けたケイの入り口にあてた。しかしすぐには入れようとせず、じっ、とケイを見つめている。
「…良いよ。でも頼むから、優しくしてくれよ?」
じゅぷ…っ
言葉が通じたのかどうか、牛男は腰を進めて、ケイの中に肉棒を埋めていく。
「あっく…い、痛っ…」
ケイの女性は信じられないほど広がって、牛男の巨大な野生を飲み込んでいく。痛みはあるが、同時に耐えがたい熱が、再び身体の奥から湧き上がってくる。
ケイはぷるぷるとした唇を開き、大きく息をして圧迫感と痛みに耐えようとしている。牛男は全てを挿入し終えると、ケイが落ち着くのをしばらく待って、ゆっくりと動きだした。
ぬぷ…っ
「あくっ…」
ちゅぷ…
「うっく…ぅんっ」
大きく開いたケイの大隠唇から溢れた、愛液の立てる水音だけが、静かな森にひびく。
「くぅぅん…」
(あぁ…また、男にヤられて感じてる…)
犬のような喘ぎ声を上げ、背中に柔らかい草の匂いを感じながら、ケイは倒錯した思いにさいなまれていた。
ちゅぷっ、ちゅぷっ。
「きゅぅ……ん、はっ」
痛みはすっかり収まり、牛男の肉棒が出入りするたび、ケイの身体が歓喜に震える。
すさまじい圧迫感に、顎は上がり、口を開けたまま荒い息を吐いている。涎が唇を伝って流れ落ちていた。
「ンモ…」
「ん…いい、ぜ。んっ!くぅん…!イッて…」
圧迫されているのは、牛男の方でも同じらしい。狭いケイの中に、逸物を出し入れしていた牛男が、苦しそうな声を上げ、腰の動きが激しくなる。
ちゅっ、ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅぷっ。
「あっ、あっ!あっ、ま、またイク…イク…ッ!」
自分の中を、巨大な物が加速する刺激に、あっさり限界を感じ、ケイは思わず牛男にしがみつく。
牛男もケイの身体を抱き、ひときわ深く、打ちつけていく。
じゅっ、じゅっ、じゅっ…「あ、奥まで来てる…!っは、もうだめ、あ、ふぅ、くぅぅぅぅん!!」
「ンモゥ…!」
ずちゅっ!ドクッ、ドクッドクッ、ドチュッ、ドチュッ…こぽ…っ
牛男が、ケイの奥深くで、信じられないほど大量の精液を吐き出す。ケイの中にはとうてい収まらず、結合部分から大量に溢れた。
「っ、ふぅ…あつい…!!ま、またイッ、こんなの…!ふぅ、キュ、キュゥゥン…v」
お腹いっぱいに吐かれた精液が全身に染み渡るような錯覚を覚え、間を置かず3回めの絶頂を迎える。
「あっ、あっ、はぁ、はぁぁ…っっ!」
牛男にぴったりしがみつき、びくっ、びくっと痙攣して快感を受け止めるケイ。その下半身は、自身の愛液と溢れた精液で、とろとろに濡れている。
やがてくたっ、と力が抜け、ケイの意識は遠のいていった。
「だ、だから違うんだって!ああもう!なんとかしろホルモン野郎!」
『…』
途中逃げだそうとするも失敗し、うっそうとした森の奥、少し開けた場所に連れてこられたケイ。木漏れ日が差し込み、静かで空気が澄んでいる。
「モゥ」
『…良い場所だろう、と』
「聞く耳持たずかよ!?」
極度の緊張に、まとっているドギースーツの毛が逆立っている。ケイが叫ぶと、頭の犬耳がピン、と跳ねた。
「モォゥ…」
『大丈夫、心配いらない、と』
「何がだよ…うわっ」
牛男が肩に触れたかと思うと、とすん、と押し倒された。超人的な力だが、痛くはない。地面は柔らかく草に覆われ、不快な感じではない。牛男はそのような場所を選んだようだ。
「や、やめ…あっ」
倒れたケイに覆いかぶさり、牛男はケイの全身をまさぐる。倒された時と同じく、とても力強く、かつ、優しい手つき。緊張していたケイの身体がほぐれていく。
「だめだって、そんなつもりじゃあ…」
ぬっ
牛男は、なおも抵抗しようとするケイの目をじっと見つめる。間近に見るとやはり、迫力がある。が、見守るよう柔らかい目のせいだろうか。なぜかケイは、目をそらす気になれなかった。
ぺろり
「やっ…」
ケイのなめらかな頬を、そっとなめる牛男。ケイは、それだけで、自分の心が溶けていくような気になった。白い頬が、見る間に紅潮していく。表情は分からないが、牛男が微笑んだように感じた。
(優しいやつなんだ…)
街をあれだけ破壊した力だ。その気になればおそらく、この身体は紙袋のようにずたずたになってしまうだろう。
コンクリートをもたやすく砕いた大きな手が、今は自分の身体を、この上なく優しく愛撫している。恐怖はあったが、ケイは、身体の奥の方に火がついたように、全身が熱くなるのを感じていた。
「あ、あぁ…」
(流されちゃだめなのに…)
一度受け入れると、あとはされるがまま、牛男の手の触れた部分、舌の触れた部分、足、そして硬直したそれの触れたところに、次々と火が灯されていく。
「む、胸…きもちい…」
大きな胸をもみしだかれ、耐えるように眉をしかめるケイ。
「ん、んっ…」
小さく声を上げ、なんとかこらえようとするが、流された心は肉欲に正直に、快感を求めてケイの中で暴れまわっている。
「ひっ!?し、しっぽ…?」
腰を撫でていた牛男の手が、ケイの尻から生えたしっぽを優しくなでる。
「あ、何だこれ…あ、くぅんっ…!」
ふさふさの毛をなでつけては逆立たせ、またなでつけ、を繰り返す。あるはずのない場所からの刺激は、ケイの腰から胸、頭、手足の先へと、急速に広がっていく。
(な、なんか、だんだん…もう、どうにでもしてほしい…)
ぷち、と、申し訳程度に胸を覆っていたふわふわのブラが破られる。ふるん、と大きな乳房がこぼれでた。
透き通るように白く、あくまで柔らかくこんもりと上を向く乳房を見つめられると、ケイは恥ずかしくなって思わず息を吐いた。
しっぽと同じく、もともと自分にはなかったところのはずなのに、耐えがたい羞恥が、ケイの興奮をさらに高めていく。呼応するように、むくむくと乳首が勃起していく。
「くぅんっ…きゅんっ!」
大きくなった乳首に、ざらついた牛男の舌が触れた途端、ひときわ大きな快感が、ケイの背筋を通りぬけた。
(さ、さっきから、声、変だ…これじゃまるで…)
「ぅぅんっ!…きゅぅん…」
スーツのせいか、ケイは意識せず、犬が鳴く声のように、せつなく喘いでいる。自ら気づいたところで、女体の奥から次々に湧いてくる快感に翻弄され、止めようもなかった。
「くぅ、ぅぅぅん…も、もう…☆」
ケイの切ない声を聞くと、牛男は、しっぽをなでる速度をあげた。なでる、というよりしごく、という速さだが、絶妙な力加減のおかげで、全く痛みはない。ケイの快感が、急速にピークを越える。
「くぁぁ…こんなの、こんなに、もう、あっ、イク…ッ…くぅぅ…ぅんっ…!!」
びく、びく、とケイの身体が震える。意識が白くなり、快感に涙が一筋、流れた。
全身を硬直させ、絶頂を受け止めるケイの身体を、牛男は優しい手つきでさすりながら、ケイが落ち着くのを待っていた。
「いたたた…」
ケイが顔をしかめ、腰をおさえる。優しくしていたとはいえ、牛男の怪力でケイの体はあちこちが痛んでいた。牛男に別れを告げ、ぼろぼろの体をひきずりながら、街に戻ってきたところだ。
『大丈夫か?』
「大丈夫か?じゃねえ!そもそもお前がけしかけたんじゃねえか!」
思わず怒鳴ると、近くにいた人たちが何事かとこちらを向いた。
街のあちこちでは、すでに復旧作業が始まっていた。仮設テントでは炊き出しが行われ、無事な建物には人が集まっておのおの復旧への計画を立てている。道路のあちこちには、避難所への誘導員や警官が立っている。心配するまでもなく、街の人々はしたたかなようだ。
ケイはといえば、まだ男の姿には戻れていない。裸同然の破れたスーツや、戦闘スーツ姿はひどく違和感があるので、しかたなく女性用のデニムとブラウス、パンプスを身につけている。
『それはそうだが…彼も言っていたことだが、あの力はきっと君の役に立つ、と思ってな』
「そうだそれだ!やっぱりあれか、街一個壊せるくらいの怪力なのか?」
『そこまでの力が出るかどうかは分からないが…』
「ふーん。まあそれは良いや。それで?いつになったら俺は男に戻れるんだ?」
『すぐにも戻せるが、今するのか?』
「…いや、あとで良いや」
ケイは周りを見渡し、家族が心配しているだろう。はやく部屋に帰って、連絡の一つも入れてやろう。
「あ、ケイさん!!」
「いまは、この人たちの作業手伝ってるんですよ!ケイさん、このあたりの人なんですか?良かったら一緒に…」
「え、いや、家族が心配なんだ。まず、ちょっと、見てくるよ。服もこんなんだし」
「そうですか…あ」
「?」
サトシは声を落とした。近寄ると、すらっとしたケイにくらべ、小柄なサトシは自然とケイを見上げる形になる。
「さっきのこと、誰にも言いませんから。安心してください。ケイさん、スーパーヒーローってやつなんですよね?」
そういうサトシの目は少年のように、きらきらと輝いていた。これまでケイゴには見せたことのない顔だ。ケイは胸がきゅん、となるのを感じる。
(ち、ちょっとまて!相手は男で、しかもサトシだぞ!なにどきどきしてるんだ…)
「ケイさん?」
「あ…なんでもない。そ、そろそろ行くよ。がんばってな」
「はい!」
赤くなった顔を見られまいと、そそくさと立ち去るケイ。その後ろ姿を見送り、
サトシはしばらく陶然としていた。
「きれいな人だったな…俺、あんな人に助けてもらえたんだな。へへっ」
やがてケイが見えなくなると、サトシは笑顔のまま、作業に戻った。
「あいつの子供…ってことは、あいつの匂いがヒントだな」
ケイは、周囲の匂いに集中する。しばらくそうしていると、頭の中に様々な匂いが流れこんでくるのを感じた。牛男に壊された街の、ガレキとホコリの匂い、車の排気ガス、無事だった家の生活の匂い…そして、あの牛男に似た匂い。ケイの頭に生えた耳がピン、と立つ。
「あっちだ!」
しっぽを翻し、再び市街地を抜け、森の中へと走っていくケイ。だんだんと匂いが強くなってきたころ、木の下にうずくまる、小さな子牛を見つけた。
「こんな簡単に見つかるとは」
『それだけ君の嗅覚が優秀になっている、ということだ』
「そうだな。…いま、親のところへ連れてってやるからな」
ムゥ、ムゥと悲しそうにべそをかく子牛を見ていると、こちらまで悲しくなってくる。
『どうやら、遊んでいて迷子になったらしい。はやく帰りたい、だそうだ』
「よし。じゃあ行くか」
子牛を抱え上げて、今度は親の匂いを探す。まだ山の中にいるらしい。
「被害は出てないみたいだ。良かった」
『ああ。早く届けてやろう』
ケイを追いかけていたのだろうか、ケイの姿を見るやいなや突進してきた牛男だったが、子牛がかけよっていくと急に大人しくなった。今は、親子で抱きあい、再会を喜んでいる。
「良かったな、子供が見つかって」
帰り道を伝えたのだろう、子牛は山の奥へと戻っていった。すっかり穏やかな顔をしている牛男に向かって、ケイが声をかけた。
「モゥ」
『ありがとう、と』
「いいんだ、それより、もう暴れるなよ?」
「モゥ…」
『面目ない、お詫びもかねて、何かお礼がしたい、と』
申し訳なさそうにうなだれる、牛男。
「ええ!?いいよ、そんなん」
「モォゥ…」
『聞けばあなたは、遺伝子情報を使って子供を見つけてくださったとか』
「え!ああ…」
「モ。」
『ぜひ、私の力もあなたの役に立てて欲しい』
「え?え、おい」
牛男が、ずい、と近寄ってくる。2メートルを超える巨体に、牛の顔。そのあまりの迫力に、ケイは思わずあとずさる。
「モォ…」
『お恥ずかしいが、あなたの様な人なら、私の力を役に立ててくれるだろう、と』
「な、何するつもり…わっ」
離れる間もなく、牛男の太い腕にひょい、と横抱きに抱えられる。
「ええっ!ちょ、下ろして!」
ケイはお姫様抱っこ状態のまま、森の奥へと運ばれていった。
「ちょっと待てー、離せー!!!」
叫び声だけもまた、森の奥へと消えていった。
ケイゴが建物から出てくると、商店街の破壊はさらに進んでおり、建物の数は半分くらいの数に減っていた。残ったものもそのほとんどに亀裂や穴がある。
音を頼りに牛男を探しだすと、逃げ遅れた人に、いまにも腕を振り下ろそうとしている姿を見つけた。
「た、助けて!!!」
青年がこちらに気付き、大声で助けを求めると、牛男もそれにつられてこちらを向いた。
その隙をついて、ケイゴの腕から数本の触手が伸び、青年の身体を素早く引き寄せる。ケイゴのスーツはもともと、同居人である赤スライムでできており、触手を自在に操ることができる。
(…!サトシじゃないか!)
逃げ遅れた青年が、先ほどまで自分と共にいた同級生、サトシだと気づく。
「モオォォォ!」
牛男がいかにも牛男らしいおたけびをあげる。同級生だろうがなんだろうが、とにかくここから逃がさないと。なりふり構ってなどいられない。ケイゴはサトシを小脇にかかえると、全速力でその場を離れた。
「ありがとうございました、お名前を聞かせていただけませんか?」
「…え」
サトシを安全な場所まで避難させ、あとは牛男を退散させるだけ、というところで、ケイゴは意外で小さな窮地にあった。
「えっと…」
さすがに、こんな姿で、同級生相手に本名を名乗るわけにもいかない。ケイゴが困っていると、助け舟が出た。
『ホルモンガール、ケイだ』
「…えーと」
『女性でケイゴというのもおかしいだろう』
「け、ケイと言います。あいつ、こっちに来るかも知れません。さあ、早く逃げて!」
「はい!」
サトシが逃げだしたのを見届けると、ケイゴ…ケイは、きっ、と宙をにらんだ。
『ホルモンガール…』
「うるさい!気に入ったのか?それより、さっさとあいつを追い払うぞ!」
再び、牛男の前に立つケイ。一度邪魔をされているからか、ガレキを踏み砕きながら、平らになった商店街を一直線に向かってくる。あまりの勢いに、思わずたじろぐケイ。
「うわっ」
『…とりあえず、人気のないほうに逃げよう』
「…そうだな」
ぶんっ
踵を返したケイの耳を、石の塊が猛烈な速度で通りすぎる。牛男が足下のガレキを投げつけてきたのだ。
「うわ、危なっ!」
『とにかく走れ!』
「おう!」
降り注ぐ石の雨の中を、全力で駆け続ける。幸か不幸か、牛男はこちらを敵、と認識しているらしく、石やら何やら投げつけながら、真っ直ぐこちらへ駆けてくる。
「うまくいったか…?」
『どうやら、そのようだ』
市街地を外れ、山の中まで逃げた後、ケイは牛男の隙をついて木の上に逃げた。枝葉が目隠しとなり、牛男からは姿は見えないはずだ。牛男は、ケイがそちらにいると思ったか、山の奥へ奥へと走っていった。
「その…相談なんだが。こないだの姿…ってことは、また女になるんだろ?男のままでスーツで戦うのは無理なのか?」
『そんなに器用ではない、すまない。では、始める』
にべもなく断られたケイゴの身体に変化が起きる。髪がざわめきながら伸び、腕、脚が細くなっていく。
「うっ…」
服が内側からどろり…と融解し、肌があらわになると、平坦だった胸が、むく、むく、と見る間に美しい乳房を形成する。頂点にある乳首も、いくぶん大きくなったようだ。肩、腰も細くなり、艷めかしいカーブを描いている。
「あぁ、ぁ…」
思わず漏らす声も高くなる。素肌を覆うように、紅いゴム状のスーツが広がっていき、目にはゴーグル、腕には真紅のグローブが装着された。
『終わりだ。時間がない、行こう』
「ああ…」
変わってしまった自分の身体が気になるが、今はそうも言っていられない。ケイゴは建物から駆け出した。