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TransToach

Toachによる小説イラストブログ。 TS物を中心に書いていこうと思っています。 ばらばらに書いているので、 まとめ読みする時は小説一覧からどうぞ

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探索・攻守交代

「な、何を考えてるんだ…!」

慌てて首を振り、平常心を取り戻そうと顔にシャワーを浴びる。しかし、このエロい身体に、一度ついた勢いは止まらなかった。身体を洗う手が、ふっくらとした尻に触れた途端、

「はうぅ…っ」

この上なく気持ちのこもった喘ぎ声が出る。俺、こんな声だせたのか…じゃなくて。

「尻に触っただけなのに…」

頭がぽうっ、としてくる。もうやめないと、と頭では分かっているものの、手が勝手に尻を撫でまわしている。

「うふっ…ああ…」

空いていた片方の手を、立派な胸の塊に伸びる。ふわっとしたそれをぎゅっ、と握りしめた。

「あ痛っっ!?」

刺すような痛みが走り、思わず手を離す。今まで、こんなことは無かったのに…と考えたところで、自分でするのは初めてだったことに気づいた。なんだ、俺が一番下手だった、ってことか。

「んっ…あぅ…」

気を取り直して、今度は優しく胸に触れる。最初は表面をさするように、揉みはじめたら、だんだん強く、押しつぶすように。

「ううっ…ああ、気持ちいい…」

いつの間にか声が出て、気恥ずかしさに目をそらす。目線の先にちょうど鏡があり、その中からは赤毛の美女が、自分の胸と尻に手をあて、紅潮した顔でこちらを見ていた。そうか、今は俺が…

『…ん、なんだ、お楽しみだったか』
「…んふ…うあああっ!?いや、これは!」

スーラが目を覚ました。せっかく良いところだったのに、との思いを必死に追いやって、なんとか言いわけしなければ、と考えている俺の苦悩を無駄にするように、とんでもないことを言ってのける。

『そうだ、どうせなら、昨日の続きをしようか。今度は交代、ということで』
しゅるるるっ。どたん。
言うがはやいか、俺の手首のあたりと、腰の後ろあたりから、真っ赤な触手がするすると伸びてくる。敵と戦うときに幾度となく目にした、スーラの触手だ。いつもと違うのは、触手はみるみるうちに、俺の身体に絡み付いていく、という点だ。足を取られて尻餅をついた後は、あっと言う間に身動きがとれなくなる。

「や、やめろスーラ…っ」
『そうは言ってもな…』

ぬるぬると全身にまとわりついた触手が、きゅっ、と、少々きついくらいに締め付けてくる。火照った身体にひんやりとした触手が心地よく、思うように抵抗できない。そんな俺の様子を知ってか知らずか、触手がさわさわと、愛撫を始めた。

「あ、ああっ…やだ…」

もじもじと逃げようとするものの、立ち上がることもできないのでは、どうにもならない。それどころかスーラは、太ももや、首筋といった敏感なところにわざと触手を固定して、俺が逃げようと動くことで快感が生じるようにしている。

「うんっ…あ、やあんっ…んっ…」

先ほど中断させられた乳房への愛撫が、スーラの触手で再開される。きゅうっ、と乳を絞るように巻き付いた触手が、強くもなく弱くもなく、絶妙な加減で刺激を与えてくる。上手だな…とかぼんやりと考えていると、スーラはますます調子にのって、乳首へと触手を伸ばす。

「あはぁぁっ!あんっ…」

乳首へ到達すると同時に、股間に伸びた触手が、膣の入り口をつん、とつついてきた。期待していた快感と、予想していなかった刺激に、思わず嬌声をあげた。きゅうっ、と、下腹部が収縮し、肉棒のない股間に違和感を感じる。見ることはできないが、濡れてきているのだろう。

「んっ、あんっ、あぁんっ…き、もち、いい…あっ、あぁ…っ」
ちゅぷ…
もはや抵抗する理由もなく快感をむさぼる。頃合いよしとみたか、スーラの触手が股を割って、ぐぐっ…と身体の中に入ってくる感触。少しの嫌悪感があったものの、相手が四六時中精神同居しているスーラでは、快感の方が圧倒的に勝っていた。触手を迎えるように腰を振ると、スーラも喜んでますます深くに潜りこんでくる。

「やっ、ふあぁっ…あん、はぁん…あはっ!」

身体の芯が、直接叩かれている感触。重く甘い痺れが全身に行き渡り、俺は大きく息を吐いた。

「あぷ…んむむっ…ぷは、ん…っ」

大きく開いた口の中に、スーラの触手が侵入してくる。びっくりして噛みそうになるが、危ういところで留まる。得体の知れない赤いモノに口の中を犯される感触が、不思議な快感となって脳にひびく。知らないうちに、舌を絡めていた。

「ちゅぷっ…んぷ。ふぁぁっ…」

口の中の触手を愛撫すると、鏡の方を向くことになった。鏡に映るのは、全身に赤い触手がまとわりつき、口と股間から犯されている一人の女の姿。それを見たとたん、俺の中で何かが燃え上がった。

「あ、や、だめぇ…」
ちゅぷ、にちゅっ…ちゅくっ。
ひく、ひく、ひく、と股間が脈動する。それに合わせるように触手が蠢き、愛液と粘液を俺の中で混ぜ合わせる。女体は頂点に向けて、一気に加速をはじめた。

「んあ、あっ、あ、イク、イク…んんッッ」
びく、びく、と身体が痙攣し、一瞬、意識が白くなる。

どくっ、どく、どくん!
計ったようなタイミングで、全身に絡み付いた触手の先端から、白い粘液が吐き出される。俺の口の中、そして、ヴァギナにも存分に注がれる。冷たい触手とは対照的に、まるで精液のように熱い。その感触に、愛おしくなるような快感を覚えた。

「あつ、熱い…!んく、んぷぅっ…はぅ…」
とぷ…どぷっ…
股間から触手が引き抜かれ、粘液と愛液の混ざったものがあふれでる。中に入っていたものを惜しむように、女性器がひくついているのを感じる。

「き、気持ち…良かった…」
スーラとの触手セックス。そのあまりの快感に、俺は触手による拘束が解けたあとも惚けたまま、風呂場にへたりこんでいた。

探索

「…で、これはどういうことなんだ」

『…分からない』

昨晩は、時に激しく、時に優しく交わりあい、限界に達してそのまま眠りこんでしまった。

『…昨日は、激しかったから…覚えてない』

ホルモン野郎…スーラは、起きたら俺の身体の中に戻っていた。少しばかり寂しかった。まあ、久しぶりに外に出て、疲れたんだろう、くらいに考えてふらふらと風呂に入ったところで、自分の身体の違和感に気づいた。シャワーヘッドを握る細く長い指。白くなめらかな、陶器のような腕。下を向けば、見事に張りだした巨乳。柔らかく揺れている。鏡を覗きこめば、燃えたつような赤い髪と瞳の、ちょっときつそうな顔。寝起きで不機嫌な表情がますます迫力を感じさせるが、それでいてなお美しい。忘れもしない、昨日何度も口づけた、柔らかそうな唇。そう、戦闘でもないのに、俺は女体化していた。呑気に寝ているスーラを脳内で叩き起こす。

「つまり、寝ぼけて変身させちまったってことか?」

『おそらくは…』

あいたたた、とつぶやく。腰が痛いらしい。スライムの腰はどこにあるんだろうか。

疲れてるみたいだしそっとしておくか、ということで俺は先にシャワーを浴びることにした。妙にスーラに優しい自分に気づいたが、昨日抱いたせいだ、とは考えたくない。

「それにしてもこの身体、本当にスタイルいいな」

シャワーを浴びながら、誰にともなくつぶやく。シャワーの水が俺の胸の上を流れていく様子が、妙に艷めかしい。水流は柔らかな乳房の頂きに達すると、細かいしぶきになって浴槽に落ちていく。いくらかの水は谷間を通り、どこまでも滑らかなお腹を流れて、今では何もなくなった股間に向けて落ちていく。それをぼうっと眺めているうち、俺はどきどきと、変な気持ちになるのを感じていた。

真・懇親会

『何がそんなにおかしいんだ』

抱きついたまま笑い続ける俺に、スーラが撫然とする。
しかし、機嫌はすこぶる良さそうだ。
白い頬に笑みを浮かべている。

『おかしいのはむしろ、君の方じゃないか』
「うっ!?」

いきなり、股間に電気が走る。
見ると、いつの間にか勃起していた息子に、スーラのきれいな指が絡んでいる。

「いや、これはその…」
『自分の身体に欲情するなんて、変態じゃないか』
…ちょっと待て。

がばっ、とスーラを引きはがし、前に回りこむ。
顔、首、胸、順番に見ていく。

「まさか」
『そうだ。変身したときの君の身体だ』

『一番慣れていたので、今回も使わせてもらった』
そういえば、ところどころに見覚えがあるような気がする。
顔とか、胸とか、足の形とか、何かしらの感情が呼び起こされる。
変身するのはいつも戦闘時なので、じっくり見たことはないが。
いや、でもやはりこの胸は…

『ほら、あんまり見るから、またすごいことになっているぞ』
ふふっ、とおかしそうに笑うスーラに、俺は思わず前を隠した。

『そうだ、せっかく外に出ているんだ、君ともっと親交を深めておこうか』
「お、おい…ちょっ」
言うが早いか、スーラが素早くかがみこみ、俺の息子がぬるぬるとしたものに包まれた。

『はぷ…はむ。んむ…』
やはりスライムだからなのか、スーラの中はちょっと冷たい。
しかし、熱い股間にはちょうど良い刺激な気がする。

『ぺろ、ん、けっこう…はむ』
味見をしたり、遊んでるんじゃないか、と思うようなフェラチオだが、これがとても気持ちいい。

『んっ、んっ、んっ…』
「あ、スーラ、もう…」
一心不乱に俺の肉棒を咥えるスーラを見ていると、俺はあっという間に高まってしまった。
引き剥がそうとするが、逆に、くわえ込まれてしまった。
さらにスーラは、頭を前後させるように深く運動する。

びゅっ、びゅっ…
「ううっ」
『ん…んっ。こく…』
あえなく、口の中で果てる。
くわえたまま、美味しそうに俺の白濁液を飲み下すスーラ。
その姿を見ていると、射精で一度は萎えかけた俺の息子が、あっという間に硬さを回復する。

『んんっ…んふ…ぷは』

『おや。まだまだ元気なんだな。では…』
スーラはフェラ、口内射精ですっかり上気した顔でつぶやくと、すっと俺の横を通り、ベッドに四つんばいになる。
そのまま俺に尻を向けて、腰を左右に振った。
その意味するところは…

『いいぞ。君の身体でもあるんだ。好きなように…』
肩越しに挑戦的な目で、こちらを見ている。
彼女も欲情しているのだろうか。
目が、さらに赤みを増している気がする。

そんなことはしかし関係がなく、俺はもはや、肉体の欲求に抗えなかった。
スーラの尻をつかむと、そのまま覆いかぶさるように挿入する。

じゅぷ、ぷっ
『あはぁああん!』
心底気持ちよさそうな声に満足し、俺は腰を動かす。

ぱん、ぱん、ぱん
『あっ、あぅ、あぁっ』
やわらかい尻に腰が当たる音が、耳に心地よい。
しかし、本当にすごいのはこの膣だ。
まるで生き物のように、俺に絡みついてくる。

ぷちゅ、ちゅ、ちゅぷっ
『ああっ…誰かに抱かれるというのは、気持ちが良いものだな…んっ』
とろり…言葉を裏付けるように、俺たちの接合部分から白い糸を引いて、スーラの体液がこぼれ落ちた。


ずぷ…っ
『あ、あ、あぁああああああっ…ケイゴ…っ』
後ろから、スーラの腰を鷲づかみにして、動きつづける。
白い腰は、意外と肉付きがよく、俺の指をやさしく受け止める。
そんなやさしさに反抗するように、俺はひときわ力強く、腰を打ち込んだ。

『あ…あっあっあっ、もう…だめ、だめ…』
「う、スーラっ…」

びゅくっ、びゅく!

『あ、いい、あ、あぁああああああ!っっっっ!!』
俺が射精すると、スーラも果てたのか、身を緊張させてぷるぷると震えた。
しばらくして、スーラの身体から力が抜ける。
俺も重なるようにして倒れる。


ぴく、ぴく、と小刻みに動く身体と、少しひんやりとした感触に、息子はまたすぐに元気になった。
仕方ないので、折り重なったまま、ぐりぐりと中で動かしてやる。

『やんっ!あっ…ま、まだやるのか?』
「もちろんだろ」

いつも女になっている鬱憤を晴らすかのように、天を向いていきり立つ息子の勢いに任せ、俺とスーラの宴は2人合計10回戦まで続いた。

懇親会

外を出歩こうが買い物をしようが気分は晴れなくて、結局すぐに帰ってきた。

あいつはといえば、ずっと黙ったままだ。
ふさぎこんだ気分は宿主である俺にも直接伝わる。
これはたまらない。

俺が言いすぎたのは確かだし、我慢するしかないか、と思った時だった。

べちゃっ
と、豆腐の落ちるような音がした。
それも俺の、すぐ近くで。
驚いて足元を見ると、真っ赤で崩れた豆腐みたいなものがうごめいている。
俺はこれに見覚えがあった。
身体からぽっかりと、何か抜け落ちたような気がするのが、何よりの証拠だ。

「…うわっ!?お前!」
足元にいるのは、さっきまで俺に寄生してたはずの物体だった。
赤い塊は身震いをひとつすると、みるみるうちに縦に伸びた。
顔の方に伸びてきたので、思わずのけぞる。

「え…な、何だ!?」
『…』
あっけにとられている間に、細長くなった塊から枝が生え、枝からさらに枝が生え、真ん中あたりが膨らんでいく。
これは、人間の形だ。
塊にはいつしか顔ができ、色もだんだん白い、人間の肌の色に近づいていく。
燃えるように赤い髪と目を持った、スタイル抜群の裸の女性が、目の前に立っていた。
無機質な声からなんとなく男性をイメージしていたので、意外だな、と思っていると、そいつが話しかけてきた。

『迷惑をかけた』
「…!」

『出ていくよ』
「ち、ちょっと待て!」
そっけなく言い残して出て行こうとするので、思わず引き留めた。

『うわっ』
軽く手をとって引っ張っただけなのだが、簡単に転んでしまう。

『二本の足で歩くのに慣れてないんだ、やめてくれ』「わ、悪い」

何故か謝ってしまうが、今はそんなこと気にしてる場合ではない。

「お前、外に出れたのかよ!それになんだその姿!どこに行くんだ!」
『質問はひとつにしてくれないか…』
女が、よく知った口調で、かぶりを振る。
間違いなく先ほどまでの同居人だが、形が見えていると全く印象が違う。
特にいまの困ったような顔は、すこぶる魅力的だ。

『まあ、全て答えはひとつだ。無理したら出られる、だ』
俺の顔に、わからない、と書いてあったのだろう。女は続けた。

『まず君に寄生した時点で、私は「寄生態」とでもいう状態に変態していた。その状態で君の身体から出るのは、私にとって大きなリスクを伴う』

『加えて私は、寄生態から元に戻ることができない。これでは外に出られない。仕方なく居候をしていたが、出てけ、と言われてしまった』
身振り手振りを加えて熱弁してくれるのはいいのだが、動くたびに裸の乳が揺れるので、目のやり場がない。

「あ、ああ。で、そんな身体で、これからどうするんだ」

『とにかく次の宿主を見つける必要がある。人の姿を模すことで少しの時間を耐えながら、住むところを探す』
「…」
それでは用は済んだ、とばかりにまた出ていこうとする女を再び引き留めようと、名を呼ぼうとして、俺は大変なことに気づいた。

俺は、こいつの名前を知らない。

何ヶ月も一緒にいて、死にそうな目にもあって、それなのに。

不可抗力とはいえ、当たり前に近くにいたから、何も知ろうとしなかった。

こんなんで、信用できないも何も、あったもんじゃない。

何より…このまま別れるなんて、できるわけがない。

気がつくと、そいつを、後ろから抱きとめていた。
首の後ろから回した腕を、しっかりと組む。

『…な』
「悪かった」

『…』
「さっきはひどいことを言って、悪かった」
腕の中で女が、びく、と震える。

「行くな」

「お前には聞きたいことがたくさんある」

「俺はお前の名前も知らない」

「だから、行くな」

『…勝手な人間だな』
ため息をつく。

『だが、確かにその通りだ。名乗ってもいないまま去るのは無礼と言うものだ』女が、自分の首に回された腕にそっと、白い手を添えた。

『それに、君の謝罪も受けた。今回は、私の無理解も原因だろう。すまなかった』

『名乗らせていただこう。ブロブのスラムドロニーム。スーラと呼んでくれ』

名乗りを受け、緊張していた俺の腕から力が抜け、初めて自分が緊張していたことに気づく。
形のない存在だった同居人が、こうして名前を持って、触れる身体も持っている。
それが無性に嬉しくて、緊張していたのも手伝って、俺はスーラに抱きついたまま、笑いだしていた。

作戦会議!打倒ブラックレディ(仮称)

「…だから、それじゃだめなんだって!」
『いや、そのりくつはおかしい』
さっきから、ことあるごとにこんな受け答えが続いている。

一人暮らしの狭いアパートに帰ったあと、ちょっとだらだらして、適当に夕飯を済ませ、ぼうっとしていると、不定形な同居人の方から話しかけてきた。
なんでも、作戦会議がしたいらしい。
どうしても朝の謎の女を倒したいんだそうだ。
こいつなりに危機感をもってたのか。
正直、夕方は、ノリだけで言っていたが、やられっぱなしは性に合わないし、一応言い出したのは俺の方なので、とりあえず始めてみたのだが…

「理屈より、勝つ気でいなけりゃ、そもそも勝てないだろ」
『気だけで勝てるなら、坊主が一番強いということになってしまう。第一だな…』
話がまとまらない。
俺としては、こいつの言ってることは分からなくもない。
論理的に進めるのは重要なことだと思う。
でもそんなこと、言いだしたらきりがないし、先に何かしたほうがよくないか?そもそも、論理的に考えたら、勝てない敵からは逃げるのが得策なんじゃないか?じゃあこの作戦会議はなんなんだ?
ということで、とことん意見が一致しない。

「ああ、もういいもういい」
『どうした』
まずいな、と思った。
でも言葉が止まらない。

「ごちゃごちゃ言ってても、お前どうせ弱いじゃないか」
『…な』
姿は見えないが、相手がひるむ感覚が確かに伝わってくる。
頭のどこかが、やめろ、と叫んでいる。

「お前を頼りになんかしてないしな。そもそも、俺にはあいつを倒す理由がない。まだ何にも悪さしてないんだから」
これは嘘だ。いましていないから、といって放置できるような相手ではない。

「だから、戦いたいなら一人でやってくれるか?俺を巻きこんだりしないで、一人で、な」
そんなことができるなら、とうに一人でどこへでも行っているだろうに。
俺はまだ止まらなかった。

「迷惑なんだ。一人の時間もなくなるしな。」
こいつの非常識な発言や、からかった時の慌てた声、あと、たわいない、しょうもない話などを思い出しながら、俺は言ってしまった。

『…』
同居人は何も言わなかった。
黙っているが、動揺している様子が痛々しいくらいに分かる。
なんたって、身体の中に住んでいるのだ。

俺は後悔の念に責なまれ、でも今さら引っ込むこともできなくて、やるせなくて、とりあえずコンビニでも行こう、と外に出た。

幕間 昼

昼。

今日もまた勝てなかった。
一瞬うまくいったと思ったんだけど。
ボロボロになった体をかかえて家に帰り、やりきれない気持ちを入れ替えるべく、シャワーを浴びる。
もちろんすでに元の男の姿に戻っている。
変身から戻ると傷は治っているものの、攻撃されたところがしくしく痛むような感覚が残っている。

すっきりしたところで、街へ出た。天気の良い日に部屋にこもっていても仕方がない。
近所の商店街は最近壊滅状態から復興し、来るたびに様子が変わっている。
環境ホルモン野郎とぶつぶつ言い合いながら、服を見たりゲーセンに寄ったりする。
最近しきりにホルモン野郎が女性服を欲しがる。
一度だけ女体化したあと、戦闘服でない、普通の服に変化したことがあったのだが、その時はシンプルな服だった。
彼としてはもっと複雑な服の構造を覚えて、変化のパターンを増やしたいらしい。
俺はそんなのはまっぴらごめんなので、女性用の服屋は無視して素通りだ。

まあ、なんだかんだで、誰かと話しながらぶらつくのは楽しい。
相手が体の中にいたり、周りからは一人言にしか見えなかったりしても。
朝のお姉さんが隣にいたりすれば、なおすばらしいのだが。
その後、いつも通り本屋に寄って、立ち読みをする。
朝の黒女に勝つために、最近、柔道の本やら空手の本やらを読んでいるのだ。

「いらっしゃいませー」
店員の声に書店の入り口を見ると、同い年くらいの男が入ってきた。
親友、サトシだ。俺は慌てて、近くの棚に隠れた。
サトシにだけは正体を知られていて、しかも色々複雑なことになっている。
いま逃げたところで学校では顔を合わすのだが、二人っきり、という状況は避けたい。
気づかれないように、書店を出た。

「しかし、お前は弱いよなー」
『そんなことはない』
書店を出て、しばらく歩きながら、ぽつぽつと話しはじめた。

『変身した君の能力は、普通の人間より遥かに上だ。相手がもっと強いだけだ』

『それに、触手も使い方次第で戦える、ということを証明したのは、君じゃないか』
「あの時は必死だったからなあ」

「でも、実際弱いじゃないか。今日は空手の技とか使ってみたけど、散々だったぜ?」
『あんな本で強くなれるなら苦労はない』
まあ、確かに。

「でも、さっき見てた柔道の技とかは参考になりそうじゃないか?絞め技とか」
『そうだな…』

『それより、他の能力のほうが戦闘向きじゃないか』
「それは…」
そうなのだ。
こいつの言うとおり、本当は苦労して手にいれた、もっと強い能力、てやつがあるのだ。
さっきの水着みたいなやつではなく、他の姿にも変身することができるのが、それだ。
が、変身する時にその…気持ちわるいので、俺としてはできるだけ使いたくない。
第一だな。

「他の能力使ったら、お前むちゃくちゃするだろう?」
他の姿のときに、なんだか自分が抑えられなくなっている気はしていた。
問いつめてみたら、より深く遺伝子に介入しているから、君の自我が薄れているかも知れない、だと。
かも知れない、ときたもんだ。
俺の自我が薄れた結果、こいつの領分が増えている、って寸法らしい。

『信用してもらわないと困る』
「否定しろよ。信用と言われてもな」
そう、正直な話、俺はこいつが信用できない。
いきなり怪物に襲われて、逃げたと思ったらぬるぬるしたのにまとわりつかれて、
女にされて、ようやく戻れたと思ったら、こんどは四六時中監視の身、ときたもんだ。
わけが分からない。信用しろという方が無理な話だ。

「お前、信用されたいんだったら、もうちょっとそれらしくしろ」
『…』
ことばがきつすぎたのか、黙りこんでしまった。
こっちが悪いことをしているような気になるが、良い薬だ。

「それより、帰ったらまた作戦を練るぞ。明日こそあの女、ヒィヒィ言わせてやる」

とこんな感じで、それは強気で家路についたのだった。
その夜、俺自身にどんなことが待ち受けているのかも知らずに。

テーマ:二次元総合 エロゲーエロ漫画エロ小説など - ジャンル:アダルト

幕間 朝

俺はケイゴ。ごく普通の大学生だ。今日は俺の休日を紹介しよう。

朝。日が低いうちに規則正しく目覚める。早起きは三文の得だ。一般的に言って何が得になるのかは分からないが、少なくとも俺にとってはそうだ。手早く着替えて、時間通りにジョギングに出かける。

「おはようございます」
「おはようございます!」
いつもの公園に着くと、いつも通りに女性とすれ違うので、大きな声で挨拶をする。同い年くらいだろうか。今時珍しい、清純そうな女性だ。挨拶以外のことを話したことはないが、この挨拶のために早起きしているといっても過言ではない。

走ったし、大きな声も出したし、目の保養もしたし、気分爽快になったところで日課の訓練を始める。といっても普通に筋トレをするだけなのだが。しかしこれは立派に戦闘訓練で、その戦闘がどういうものかについては後で述べる。

わん、わん。
腹筋をしていると、小さな犬が俺の腹の上に乗ってくる。ここを遊び場とでも思っているのか。飼い主の姿は見えない。しばらくしてもどく様子がみえないので、邪険にして追い払った。

訓練を終えて家に向かう途中、俺は決まってトイレに入る。「ぐっ…」とかうめき声をひとつたて、出てきた時には俺は全身赤ずくめの、バリバリの戦闘モードになっている。紅のブーツにゴーグル、髪も肩あても燃えるように真っ赤だ。正直かっこいい。これで邪魔な胸がなかったり、腰が妙に細くなってなかったり、でかい尻を包むのがが水着みたいな薄い生地だったり、お腹がまる出しでなかったりしたらもっと良かったのだが…。念のために言っておくと、俺は正真正銘の男だ。

『来たぞ』
こいつが変身させる前は。こいつはどろどろのスライムみたいな体で、遺伝子を自由に操作し、肉体に瞬時に反映する力を持っている環境ホルモン野郎だ。変なきっかけで命を救ってやってから、こいつは俺に寄生しやがった。こいつの力で俺はヒーローに変身できる。その力で街を救ったり、親友を救ったりしたが、我慢ならないのは変身したあとの俺の姿が女だってことだ。それも、かなりのイイ女だ。俺の目の前に来るならまだしも、自分がイイ女になったところでどうしようもないし、ヒーローとしての自信が少しなくなる。

『どうした?』
「いや、なんでもない」
少し感傷にひたってしまった。今は目の前の敵に集中しなければ。毎日決まって、俺の訓練の帰りを待っているかのように、同じ敵が現れる。姿形は黒ずくめの女なのだが、これがめっぽう強い。黒ずくめだし、悪そうだし、放っておいたら何をするか分からないので、早いこと倒さないといけない。毎日の訓練はこいつを倒すためにあるようなものだ。もちろん俺としては、ジョギングのおねえさんと挨拶をする方が大事なのだが。

しかし実のところ、この勝負に俺は負け続けている。にもかかわらず俺が生きているのは、いつもこちらがボロボロになり、とどめを刺される、というぎりぎりのところで拳を納め、勝ち誇って去っていくからだ。とことん馬鹿にされているようで、正直くやしい。大体一体全体あれは何なのか。

ともあれ、今日こそは、との意気込みで俺は黒女に襲いかかる。遠間からマントをひるがえすと、無数の触手が黒女を絡めとろうとマントの陰から伸びていく。俺の基本的な攻撃方法だ。触手とは大変いやらしいようだが、ホルモン野郎がそれくらいしか攻撃方法を持っていないからだ。それに、絡めとった後のことは考えていない。というのも、触手はたいへん弱弱しく、いつも全て叩き落されるからだ。今日もそれだった。2,30本はあった触手が、簡単にはたき落とされてしまう。何本かは届いて、腕や脚に絡みつこうとするが、苦もなく引きちぎられてしまった。

攻撃が失敗した俺は、距離を空けて体勢を整えようとする。と、足を引っ掛けて転んでしまった。その隙に黒女に組み伏せられる。黒いマスクの下は美人そうかも、とか考える前に一発、二発、と蹴られ、踏まれ、膝を入れられ、呼吸ができなくなる。身体から、力が抜けていく。き、今日も、勝てないのか…?