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TransToach

Toachによる小説イラストブログ。 TS物を中心に書いていこうと思っています。 ばらばらに書いているので、 まとめ読みする時は小説一覧からどうぞ

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親友の危機

「だからね、ケイさん、俺はケイさんがホントにすごいと思うんだよ」
「あ、ありがとう…」
サトシに目をキラキラ輝かせながら言われ、ケイはまた赤面した。酒の勢いもあるのか、恥ずかしいことをどんどん言ってくるので、ケイはずっとこんな調子だ。

「あ、もうこんな時間だね。そろそろ出ようか」
「え、ああ」
ケイは断ったのだが、当然の様におごられてしまった。少し罪悪感を感じる。

「ごちそうさま、サトシ君」
「いえい…え」

店の外に出て、礼を言おうとした途端、サトシの様子がおかしくなった。目を見開いたまま、月を見つめている。

「だ、大丈夫、サトシ君」
『危ない、下がれ!』

ブン、とサトシが腕を振る。致命傷にこそならないものの、十分な威力を持った打撃が空を切る。

「ど、どうしたんだ、サトシ!」
「…」

つい先ほどまでの饒舌さとはうっとかわって、サトシは無言で、こちらに鋭い視線を向けている。

『これは…やられているな』
「昨日の奴らと同じってことか?」
『おそらく』

ガッ!振り降ろしてくる両手を、身軽にかわす。昨日の具合では、またいつ増援がくるか分からない。ここは早く離れないと…

サトシが、矢次ばやに攻撃を繰り返すのを、ケイは見事にかわしていく。少ないが、いままでの戦闘経験が、ケイを成長させていた。

しかしサトシは攻撃の手を休めない。ケイは、親友に攻撃されている動揺から、余計に体力を消費している。変身前の身体は、体力的には普通の女性と全く変わらない。このままでは…

「許せ、サトシ!」
サトシの後頭部を、思いきり殴りつける。武道の達人のように、傷つけずに済まないのが辛いところだが、ともかく、降ってわいた危機はなんとか脱した。

「…はぁ、はぁ」
肩で息をして、倒れたサトシを見つめる。

『早く逃げないと、追っ手がやってくる』
「なぁ。こいつ、これからどうなるんだ?」

『…言いにくい話だが』

『昨日、そして今。彼らが何をされたのか、調べてみた』

『彼らは吸血鬼の「眷属」にされている』

『血を吸われ、操られている状態だ。普段はなんともないが、君を見ると襲ってくるだろう』

『そして、彼らが自然に治癒することは、ない』

「…!じ、じゃあ」

『吸血鬼を倒せたなら、治すことはできるだろうが…全く姿を見せていない今、』

『彼にできることは、ない』

「そんな!なんとかならないのかよ!」
ケイは激しく食ってかかる。

「サトシはいいやつだ!長いこと付き合ってきたが、気のいい、お人好しだ!それに、今日だって…ヒーローに憧れてる、って、すげえ良い顔で…」
息が切れ、大きく息継ぎをする。

「このままじゃ、サトシがかわいそうだ!何か、できることはないのか!」
『…ない、ことはない。ただ、問題が…』

「何の問題だろうか、構うもんか!今は、こいつを助けてやるのが先だ!」

『そうか、そこまで言うなら…まず、場所を変えようか。サトシ君を運ぶ。変身するぞ』

「お、おう!」
変身…とはいえ、すでに女性の身体なので、服が変わるだけだ。ブラウスが、ジーンズがどろり、と溶けたかと思うと変色し、赤いスライムとなっていく。

「く、ん…っ」
冷たいスライムが肉体にまとわりつく、不気味な感触に小さく声を上げるが、今はかまっていられない。そうしている間にスライムは全身をぴっちりと包む薄いスーツとなる。どこからかゴーグルを取り出し装着すると、ホルモンガールへの変身が完了した。

ケイは背中から触手を伸ばして倒れたサトシを絡めとり、持ち上げて、そのまま自分の背中にくくりつける。
しっかり固定されているのを確認すると、ケイは顔を上げた。

「…よし!行こう!」
『まずはあっちだ。詳しい方法は、移動しながら説明する』
「わかった!」
言うが早いか、人一人担いでいるとは思えない速度で、軽やかに走り去った。

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