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TransToach

Toachによる小説イラストブログ。 TS物を中心に書いていこうと思っています。 ばらばらに書いているので、 まとめ読みする時は小説一覧からどうぞ

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捜索

「あいつの子供…ってことは、あいつの匂いがヒントだな」

ケイは、周囲の匂いに集中する。しばらくそうしていると、頭の中に様々な匂いが流れこんでくるのを感じた。牛男に壊された街の、ガレキとホコリの匂い、車の排気ガス、無事だった家の生活の匂い…そして、あの牛男に似た匂い。ケイの頭に生えた耳がピン、と立つ。

「あっちだ!」

しっぽを翻し、再び市街地を抜け、森の中へと走っていくケイ。だんだんと匂いが強くなってきたころ、木の下にうずくまる、小さな子牛を見つけた。

「こんな簡単に見つかるとは」
『それだけ君の嗅覚が優秀になっている、ということだ』
「そうだな。…いま、親のところへ連れてってやるからな」

ムゥ、ムゥと悲しそうにべそをかく子牛を見ていると、こちらまで悲しくなってくる。

『どうやら、遊んでいて迷子になったらしい。はやく帰りたい、だそうだ』
「よし。じゃあ行くか」

子牛を抱え上げて、今度は親の匂いを探す。まだ山の中にいるらしい。

「被害は出てないみたいだ。良かった」
『ああ。早く届けてやろう』

ケイを追いかけていたのだろうか、ケイの姿を見るやいなや突進してきた牛男だったが、子牛がかけよっていくと急に大人しくなった。今は、親子で抱きあい、再会を喜んでいる。

「良かったな、子供が見つかって」

帰り道を伝えたのだろう、子牛は山の奥へと戻っていった。すっかり穏やかな顔をしている牛男に向かって、ケイが声をかけた。

「モゥ」
『ありがとう、と』

「いいんだ、それより、もう暴れるなよ?」

「モゥ…」
『面目ない、お詫びもかねて、何かお礼がしたい、と』
申し訳なさそうにうなだれる、牛男。

「ええ!?いいよ、そんなん」

「モォゥ…」
『聞けばあなたは、遺伝子情報を使って子供を見つけてくださったとか』
「え!ああ…」

「モ。」
『ぜひ、私の力もあなたの役に立てて欲しい』
「え?え、おい」
牛男が、ずい、と近寄ってくる。2メートルを超える巨体に、牛の顔。そのあまりの迫力に、ケイは思わずあとずさる。

「モォ…」
『お恥ずかしいが、あなたの様な人なら、私の力を役に立ててくれるだろう、と』
「な、何するつもり…わっ」

離れる間もなく、牛男の太い腕にひょい、と横抱きに抱えられる。

「ええっ!ちょ、下ろして!」

ケイはお姫様抱っこ状態のまま、森の奥へと運ばれていった。

「ちょっと待てー、離せー!!!」

叫び声だけもまた、森の奥へと消えていった。

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